■番外編.3


水替え不用の水草水槽の話

お出かけいただきましたお客様がなにかと話題になり、興味をそそられるようですので!
 

2008年8月の様子です、ちょっと伸び放題かな。

この水草水槽は2006年5月にウィーンルブラの展示用にラウンジに設置したものです。
水槽サイズは、1800×360×450mmです。
設置してからすでに2年ほどになります、管理としては水足しをしてきただけであります。
このところ少し水草が伸びすぎででありますが。

いつも話題になるのは水替えをする事無く水足しだけでかなりの数グッピーも増えている中水の透明度も高く維持できているという部分です。
お客様   「この水槽サイズはどのくらいあるんですか?」
店長小林 「1800かな、二年くらいほっておあるんですけど」
お客様   「えっ、水替えしてないんですか?」
お客様   「ろ過器付いてないですよね、どこにも見えないですよね」
店長小林 「まぁそんなもんです、水草の中のルブラって綺麗でしょ」
お客様   「確かにきれいなんですけど・・・・・・・・」

こんな会話が多いのですが、お客様の興味は何もしなくてこの状態という所にあるようですが。

水槽をセットした日にちを確認いたしましたがやはり二年くらいになります。
右の図をご覧ください、設備としてはこれだけのものです。
機能としては
* カップストーンフルターからの送気により水槽内を好気性状態を保ちます。
*グッピー元気からは一定の菌体が水槽内に常時供給されています。
*この底砂が水替えの頻度を減らすポイントになります、1ミリに満たない細かい川砂や川砂が用意できない場合は砕石を3センチ〜5センチ敷きます。
*照明は20ワットの蛍光灯を3灯、約7時間ほど点灯しています。
*場合により弱いエアーレーションをかけます。
こんな簡単なものですが、これらが上手い相互関係になり非常にロスの少ないシステムを作りだします。
全てが連鎖していますのでわかり易く説明するためグッピーをスタートにしてお話して見ましょうか。

まず、カップストーンフィルターの送気により水槽内に溶け込んだ酸素はグッピーが呼吸して使われ二酸化炭素としてグッピーから排出されます。
この二酸化炭素は照明が点灯時水草に吸収されて炭素肥料となります。
グッピーに餌を与えます、糞尿としてグッピーから水槽内に放出されます。
この
糞尿は基本的にタンバク質です、水槽内でます加水分解されアンモニア→アンモニウムへと分解されていきます、この際ある程度は水草にチッソ肥料として消費されます。
これらの大半は亜硝酸菌の酸化によってアンモニウムは亜硝酸塩に酸化され、次の段階で硝酸菌に酸化により硝酸塩に酸化されていきます。
これは基本的なろ過の考え方です、こうした酸化によるろ過反応はアンモニア→アンモニウム→亜硝酸塩→硝酸塩と進むに連れ毒性が低くなるのを利用したものです。
しかし硝酸塩まで酸化されてきても全く無毒になる訳ではなく今までは最終的には水替えをせざるえなかった訳です。




2006年9月の様子です

このシステムの場合まだ続きがある訳です。
今お話したように水槽内はカップストーンフィルターの送気により十分な酸素が供給されています、ここからが面白い部分です。
底砂の表面部分は十分な酸素がありますから好気性菌(酸素をほしがる菌)が繁殖して行きます、そうしますとこの水槽のように大変に粒度の細かい砂が敷かれていると砂の下層は酸素が無くなって行きます。
そうしてこのような無酸素状態が続きますと嫌気性菌(酸素が無いところで繁殖する菌)がゆっくりですが繁殖をはじめます。
この嫌気性菌は酸化反応でなく還元反応を行います、つまり今まで好気性菌によって最終的に生産された硝酸塩をチッソガスとニ酸化炭素に分解します(これを脱窒といいます)。

要するに常時少しづつ水替えをしているのと同じことになりさほど水替えは必要なくなる訳です。
良く底砂部分を観察するとチッソの気泡を確認する事ができます。
これはいわゆる還元ろ過といわれるものでやっかいな言い方をすると我々地球自体がこうしたバランスで成り立っている訳です。

初期の段階ではこうした還元ろ過は無酸素状態が作りやすい海水では現実味があるが溶存酸素量の多い淡水域では難しいといわれて来ましたが、最近信頼できる筋の話ではかなり現実味のある値までの脱窒が可能のようです。

ではこのシステムの中でグッピー元気はどんな役割をはたしているのでしょうか?
グッピー元気からは一定の菌体が常に生産され水槽内に供給されています、このように一定の菌体が常に供給されている環境ではその菌体を中心とした菌体バランスが出来上がります。
このようにして出来上がる菌体バランス常に一定の菌体を供給する限り非常に安定的で多少のことでバランスを崩す心配がありませんシステムの要といえます。
またこの
グッピー元気から生産される菌体であるセルロース分解菌は強くセルロースを分解しますから藻の発生も抑制することもできます。
こうしてこのような水槽が出来上がっている訳です、一つの惑星みたいですね。
一旦バランスが出来上がると手がかからず観賞用水槽などには本当に良いものです。

こんなシステムを試して見たい方へのアドバイスです!
*水量は少なくとも100リットルは欲しいと思います。
*細かい底砂と十分な水草そしてある程度グッピーの固体数がいります、自然繁殖を楽しめるような品種が良いでしょう。
*底砂をかき回してはいけません、脱窒が行われるようになりシステムとして動き出すのには早くても半年くらいかかるようです。
*植える水草の種類にウィータースプライトを加えていただけますと効果的です。

 


Canon EOS 10D・EF 50mm Compact-Micro Photo/S.kobayashi