■品種研究リポート 基本編No.2


アイボリー表現の真実

The truth of “Ivory expression”

このしゃれた色合いのグラス品種、アイボリー色の真実です!
 
■アイボリーグラス
■アイボリーモザイク

昨年らいアイボリーにつきまして、お問い合わせをいただく事が多くなりましてた。
アイボリーの基本的な構造はお出かけいただいているお客様にはご理解いただいているとおもうのですが、
最近多々怪しげな情報が出回っているようで、アイボリーに手を出された方々に戸惑いがあるようですので現在わかっているアイボリーの基本的な構造と、いままでの品種的な流れなどお話しようとおもいます。

私がアイボリーと付き合いはじめたのは、かれこれ五〜六年前の話になります。
お付き合いをさせて頂いている和歌山県のT氏からお譲りいただいた雌固体3尾からアイボリーは、はじまりました。
当時バイオレットモザイクと言うものが出回ておりましたが、私にはどう見てもバイオレット(紫色のことですよね?)には見えなくて、なんなのと思っていた時に頂いた固体でありました。
当時からバイオレットといわれたものと、アイボリーは同じものといわれていましたが、決め手になる根拠は無く最近になりましてまったく同じものと判断していいだろうと言うことがわかってきました。

お譲りいただいた3の固体から仔を得る事が出来ましたが、当時のアイボリーはひどい奇形を遺伝的に抱いていたようで、この3固体のうち2固体からの仔はほとんどが奇形で手の打ちようがありませんでした。

お送りいただいたT氏はさすがにこのアイボリーを把握しておられ何度かお電話をいただき
「どうですか、奇形はでませんか?」
と気をつかっていただいたことは今でもわすれません、ありがたく思っております。

話は戻りますが、この3固体のうちひとつにの雌だけ運良く奇形は見られず多くの正常なアイボリー固体を得ることができました、これが現在の私どものアイボリーの原型であります。

そもそもこのアイボリーは東南アジアからの輸入グッピーであるアイボリーモザイクから引き出されたものにようですが,当時輸入アイボリーモザイクの場合は、仔を採るとアイボリーとオレンジに近い赤色の固体に分離したのですが、ここでいうアイボリーの場合得られる仔はすべてアイボリーになります。
ここら辺のこだわりはやはりジャパングッピーの味でありましょう。

この頃のアイボリーモザイクの構造は、常染色体にRの優勢ホモ・アイボリーの劣勢ホモ、性染色体のYにモザイク・XグラスまたはXモザイク、雌側はXモザイク・Xグラス、と大体こんな感じでありました。
このころのYモザイクは非常に柄を流す力が強く、まごつくと墨流しのような柄に尾びれになってしまい、これがしいて言うならムラサキががって見えない事もなく・・・・・まあ無理強いバイオレットと言えばバイオレット・・・・・?

■ギャラクシーアイボリーグラスの若
■プラチナアイボリーグラスの若

このアイボリーモザイクからまず、雌側のXをモザイクを揃えたアイボリーモザイクと、Xグラスのタイプに、Yにギャラクシーを入れてギャラクシーアイボリーグラスに展開しました。
この時に唐沢氏系のギャラクシーで展開した事が後々グラスにする時に最大ポイントになりました。

このようにアイボリーは現在も品種のはばを広げている訳ですが、皆さんは一番興味のある部分、アイボリーはどのような基本構造を持っているのかと言うお話を致しましょう。

ではまず下の顕微鏡画像をご覧ください。
左側の画像がアイボリーで揃っている個体のものです、右側はアイボリーは揃っているものの常のRがヘテロ、要するにブルーグラスのブルーの表現と同じ構造になっている個体の画像です。

■アイボリーモザイクの色素細胞
■アイボリーのRヘテロ個体の色素細胞
■アイボリーモザイクの色素細胞
■アイボリーのRヘテロ個体の表面細胞膜
青っぽく見えるのは状態を見やすくするために染色されて撮影されています

アイボリーのRヘテロ個体の表面細胞膜の画像をご覧ください、やはりブルーグラスと同じにほとんど細胞が破壊された状態になっています。

その他の画像は、そう個体の色素細胞の画像です。
なにやらアイボリーモザイクの方は白味ををおびた赤い色素細胞が確認できます。
もうひとつアイボリーモザイクの色素細胞の画像は全ての色素細胞がきれいに白くなっているのがお分かりいただけるとおもいます。
アイボリーのRヘテロ個体の色素細胞はブルーグラス同様黄色の色素細胞が確認できます。

これはいったいどうゆうことなのでしょうか?

アイボリーという色合いは、尾びれにアイボリーという色素細胞があるわけではなく赤い色素細胞が、仮死状態になっていてこの色素細胞が反射して白く見える、まあアイボリー色に見えると言うことなのだそうです。

つまりアイボリー色の元は赤の色素細胞ということなのです。
当然生まれてくる仔が100%アイボリーになっても何の不思議もないということになります、ですからこのアイボリーというのは遺伝的に見れば赤の色素細胞の動きを止める力と考えれば判りやすいといえます。

ですから、アイボリーを表現するためにはベースは赤でなくては表現できないと言うことになります。

そこで先ほどのアイボリーのRヘテロ個体の画像をご覧ください、この個体はブルーグラスのブルーと基本的に同じ構造で、表面細胞膜の乱反射によって黄色の色素細胞がブルーに見えることはあっても、アイボリーを表現する赤の色素細胞が少ない訳ですからいくらアイボリーでそろえたところでアイボリーは表現できないわけです。

■アイボリーとレッドグラスの交配F1
■アイボリーグラスリボン

先日お客様から、
「アイボリーが常で揃っている場合に、常にRがホモの場合アイボリーで、Rがヘテロの場合がバイオレット」
という話をしている方がおられるとを聞かせていただきまして誠にびっくりしたしだいです。

先ほどお話してきましたように、アイボリーは赤で揃っていなければ表現できない訳ですから・・・・・、まあ名前はバイオレットでもアイボリーでも記号ですからかまわないのですが、表現の色合いから見てもアイボリーの方が適切に私は思えますがいかかなもんでありましょうか。

ここでアイボリーを表現できる条件を整理しておきましょう。
*まずアイボリーという色合いの表現は常染色体にあるということ。
*常にRいわゆる赤が優勢ホモで揃っていること。
*そして常にアイボリーが劣性ホモで揃っていること。
こんな所になります。

アイボリーの色合いはこうしてはっきりと条件がつかめてきたのですが、このアイボリーはまだまだ未知の部分も残されています。
上のアイボリーとレッドグラスの交配F1個体の画像をご覧ください。
いったんアイボリーと交配させるとご覧のように体がきれいな水色を表現してきます、またF1個体ですからアイボリーはヘテロ状態ですが、なんとなく尾びれのレットグラス模様にアイボリーらしき表現が現れまた非常に体格が良くなります。
まだ解明できない部分も残されています。

そのお隣の画像はアイボリーグラスのリボンですが、これはアイボリーの新しい方向のひとつです、作為的では無くこの個体はけがの巧妙とゆうやつです。
アイボリーでそろえた所に性染色体にシルバーブルーグラスを加えた?加わってしまった、個体です、どうなるのか・・・・・・・・・・・。
ご想像におまかせします、だめですヨ、アイボリーとシルバーブルーグラスをドンブリで考えては。
ただしアイボリーの他品種との交配は覚悟して行ってください、アイボリーが揃っているかどうかは雌側は外見ではまったく区別ができませんのでそのつもりで・・・・・・・・。


大体のところアイボリーご理解いただけましたでしょうか?
情報はやはりある程度整理されて正確さは必要ですよネ。
そうでないと、まじめにやってる方はたまりません、ほんとに。
これでアイボリーの世界がいちだんと広がることと思います。

*プライバシー保護のためお付き合いいただいている方々の氏名は伏せてあります


Canon EOS 10D・EF 50mm Compact-Micro Photo/S.kobayashi
顕微鏡画像についてはDr,G氏より許可をいただきお借りしました